がんは薬では治せない病ですから、手術ができないがん患者にとってみれば、少しでも効果が期待できるなら、丸山ワクチンを試したいと思いますが、政府が認可していなかったため丸山ワクチンの治療を受けられず、それがかえって丸山ワクチンの潜在的な価値を引き上げて行きました。
丸山ワクチンは結局、1991年に放射線治療による白血球減少抑制剤として認可を受けます。
残念ながら、丸山ワクチンは臨床試験でがん治療の有効性は証明されませんでした。
丸山ワクチンは元々結核のワクチンとして開発され、結核菌から毒性を除いた物質を抗原としてワクチンにしたものです。
ですから、効いたとしても結核であって、がんではないはずです。
でも、がんに効いたという噂が立つ理由はあります。
丸山ワクチンは結核菌をコピーした抗原ですので、人間の体内に入れば、免疫反応が起きて、免疫力が高まります。
免疫力としての白血球が増加し、その増加した白血球ががんへの攻撃力を高めたと考えることはできます。
ただし、丸山ワクチンによって特定のがんへの集中的な攻撃力が高まったかどうかははっきりしません。
もしかしたら、人によっては、丸山ワクチンで増やされた白血球が、自分のがんを攻撃してくれたのかもしれません。
人間の免疫系は、悪者が何かが示されないと攻撃してくれません。
丸山ワクチンではすべての人のすべてのがんへの攻撃指示は出せなかったのかもしれません。そこは謎です。
ワクチンとがんの関係でいうと子宮頸がんの予防ワクチンが有名ですが、子宮頸がんはウィルスでがんになることが医学的に証明されたので、ウィルスから抗原をつくってできたワクチンが予防には有効な場合もあります。
丸山ワクチンの場合、元が結核菌ですから、結核菌ががんを引き起こすと証明されないことには、効果(予防効果)は疑問視されてしまいます。
もっとも、繰り返しますが、丸山ワクチンの投与によって白血球が増えたことでがんへの攻撃力が高まるということまでは否定できません。
狙った病原体や悪性のがん細胞を元にしてワクチンをつくったほうが、その病気に対する免疫反応を呼び起こせるので、効果が高いような気がします。
だから、がんの死細胞をワクチンとしたほうが、がん毎にワクチンをつくれますし、技術が進歩すれば患者さんごとにつくることもできそうなので、がん治療には有効だと思います。
理化学研究所がそのカラクリを解明しましたが、このカラクリを利用したワクチンの開発がなされていないとしたら、残念なことです。